「しばらくお待ちください」
日常生活で、よく目にしたり耳にしたりする言葉です。
電話の保留中、パソコンの処理画面、混雑しているお店の案内など、実にいろいろな場面で使われています。
でも、この「しばらく」って、いったい何分なんでしょう。
30秒? 3分? 10分?
便利な言葉ではありますが、よく考えると、ずいぶん曖昧です。
しかも、待たされる側にしてみれば、結構重要な情報だったりします。
3分だと分かっていれば、3分待てる。
例えば、電話で問い合わせをしているとき。
「確認いたしますので、しばらくお待ちください」
そう言われて保留音が流れ始めます。
最初の30秒くらいは、まあ普通に待ちます。
1分経過。まだかな。
2分経過。結構かかるな。
3分経過。ひょっとして忘れられてない?
こんな経験、ありませんか?
でも、最初から「確認に3分ほどかかります」と言われていたらどうでしょう。
おそらく、同じ3分でも感じ方は違うと思います。
もちろん、人によるでしょうけど、少なくとも「いつ終わるか分からない」という不安は減ります。
待ち時間そのものより、終わりが分からないことの方が気になる場合もある。
これ、案外大事なことかもしれません。
「まもなく」も、なかなか怪しい。
似たような言葉に「まもなく」があります。
「まもなく電車が参ります」
「まもなく順番にご案内いたします」
「まもなく処理が完了します」
どれも、もうすぐ終わりそうな雰囲気があります。
ところが、なかなか終わらないこともあります。
特にパソコンの「まもなく」は油断できません。
「あと少しなんだな」と思って待っていたら、そこから妙に長かったりする。
進捗バーが99%まで進んだのに、最後の1%がなかなか終わらない、なんてこともあります。
あの99%は、いったい何を基準にしているんでしょう?
まあ、処理の内容によっては正確な残り時間を計算するのが難しいのでしょうけど。
それなら、いっそ「終了時間は分かりません」と表示してくれた方が正直なのでは、と思うこともあります。
いや、それはそれで不安になるか。
正確な時間が分からなくても、伝えられることはある。
もちろん、待ち時間を正確に予測するのは簡単ではありません。
問い合わせの内容によって確認にかかる時間は違うし、飲食店なら料理や混雑状況によっても変わります。
無理に「あと3分です」と伝えて、結局10分かかってしまったら、かえって印象が悪くなるかもしれません。
でも、時間以外にも伝えられることはあります。
例えば、
「担当者に確認しています」
「現在、順番にご案内しています」
「あと2組のお客様をお待ちいただいています」
こうした情報があるだけでも、少し安心できるのではないでしょうか。
大切なのは、正確な数字を伝えることだけではなく、今どういう状態なのかが分かること。
何も分からずに待つのと、状況を知ったうえで待つのとでは、気持ちが違います。
待ち時間を短くする以外の方法。
お店やサービスの改善というと、どうしても待ち時間そのものを短縮する方向に考えがちです。
人を増やす。作業を効率化する。システムを導入する。
もちろん、待たずに済むなら、それに越したことはありません。
でも、予算や人手の問題で、すぐには改善できないこともあります。
だったら、待ち方を変えてみるという方法もあります。
例えば、
待っている間にメニューを選べるようにする。
店内の様子が分かる案内を用意する。
順番が近づいたら知らせる仕組みにする。
あるいは、ただ座って待つだけではなく、少し自由に過ごせるようにする。
待ち時間をゼロにできなくても、待っている時間の感じ方は変えられるかもしれません。
もっとも、何かを用意すれば必ず喜ばれるわけでもありません。
静かに待ちたい人に、延々と映像を見せたり、あれこれ説明したりするのは、かえって迷惑でしょう。
何もしないで待てることだって、ひとつの快適さです。
そもそも「しばらく」は便利な言葉なのか。
考えてみると、「しばらく」という言葉は、伝える側にとって非常に便利です。
正確な時間を約束しなくていいし、短くて丁寧。
いろいろな状況で使えます。
ただ、受け取る側にとっては、知りたい情報が抜け落ちていることもある。
これは「しばらく」に限った話ではないと思います。
「少々」「適宜」「なるべく早く」「順次対応します」。
どれも便利な言葉ですが、人によって受け取り方が違います。
だからといって、何でも細かく数字で示せばいいわけでもありません。
曖昧さがあるからこそ、柔らかく伝えられることもあります。
大事なのは、その曖昧さが相手を困らせていないか、ということなのでしょう。
さて、ここまで「しばらく」について考えてきましたが、結局何分なのかという答えは出ませんでした。
ただ、ひとつだけお願いがあります。
電話の保留で「しばらくお待ちください」と言われてから5分くらい経ったときは、一度戻ってきてほしい。
「もうしばらくお待ちください」以外の言葉で。

