何か困ったことがあると、つい「自分で作れないかな」と考えてしまいます。
ちょっとした棚、カードを立てる道具、店内で使う案内表示。
市販品でぴったりのものが見つからないと、材料や構造を考え始めます。
ホームセンターや100円ショップで使えそうな部品を探したり、紙を切って試してみたり。
こういう時間が、結構好きです。
でも最近、こんなことも思うようになりました。
「そもそも、作る必要があるんだっけ?」
今日は、ものづくりが好きな人間が、ものを作らない選択について考える話です。
作ることは、楽しい。
ものづくりの面白さは、頭の中にあったものが実際の形になることだと思います。
「こうすれば使いやすいんじゃないか」
「この角度なら、ちゃんと見えるかな」
「もう少し小さくしても大丈夫そうだ」
そんなことを考えながら、材料を切ったり、組み合わせたり。
試作品を作ってみると、思っていたより使いやすいこともあれば、まったくダメなこともあります。
特に面白いのは、失敗して初めて分かること。
紙の上では問題なさそうだったのに、実際に置いてみると倒れやすかったり。
見た目はいいのに、使うときに手が引っかかったり。
やっぱり、頭の中だけでは分からないことがたくさんあります。
そういう発見も含めて、作ることが好きなんだと思います。
でも、すでに売っているかもしれない。
例えば、お店で使う小さなカードスタンドが必要になったとします。
最初は、材料を買って自作する方法を考えます。
どんな形がいいか。どうやって立たせるか。何を使えば安定するか。
ところが、よく探してみると、ちょうどよさそうな商品がすでに売られていたりします。
しかも、きれいに加工されていて、値段も手頃。
こうなると、少し複雑な気持ちです。
せっかく作り方を考えたのに。
でも、冷静に考えれば、完成品があるならそれを使えばいい。
必要なのはカードを立てることであって、カードスタンドを自作することではないのですから。
自分で作れることと、自分で作るべきことは違う。
これは、意外と忘れやすいところです。
既製品を、そのまま使わなくてもいい。
とはいえ、既製品が目的にぴったり合うとは限りません。
サイズが少し違う。角度が合わない。色が気に入らない。
そんなとき、全部を一から作るのではなく、少しだけ手を加えるという方法があります。
例えば、
ブックスタンドを別の用途に使ってみる。
市販のクリップと板を組み合わせて、案内道具にしてみる。
必要な部分だけ作り、ほかは既製品を利用する。
こういう方法は、個人的にかなり好きです。
世の中には、すでに誰かが考えて作った便利な部品がたくさんあります。
それを使わない手はありません。
しかも、自分で一から作るより、品質が安定している場合もあります。
もちろん、組み合わせ方によっては、見た目が悪くなったり、壊れやすくなったりすることもあります。
単にくっつければいいわけではない。
でも、必要なところだけ自分で工夫するというのは、なかなか合理的な方法だと思います。
作るほど、面倒になることもある。
ものづくりには、もうひとつ気をつけたいことがあります。
作った後の話です。
例えば、ちょっとした案内道具を自作したとします。
最初はうまく使えていても、使っているうちに部品が外れるかもしれません。
汚れたらどうするのか。壊れたら直せるのか。別の人でも同じものを作れるのか。
お店で使うものなら、毎日扱う人のことも考える必要があります。
作った本人だけが使い方を知っているようでは、困ってしまいます。
これはデジタルの仕組みでも同じです。
自分で工夫して作った便利な仕組みが、担当者が変わった途端に誰も使えなくなる。
それでは、あまり便利とは言えません。
完成した瞬間より、その後ちゃんと使い続けられるかどうか。
仕事としてものを作るなら、そこまで考えたいところです。
作らない方が、よくなることもある。
さらに考えてみると、そもそも道具を増やさなくてもいい場合があります。
例えば、店内に案内表示が必要だと思ったとき。
新しい看板を作る前に、今あるものの置き場所を変えてみる。
分かりにくい説明を追加する前に、迷う原因になっているものを取り除いてみる。
新しい収納用品を作る前に、置いてあるものを整理してみる。
それだけで目的を果たせるなら、わざわざ何かを作る必要はありません。
作ることが好きな人間にとっては、少し物足りない解決方法です。
でも、使う人にとっては、その方がありがたいかもしれません。
ものが増えれば、置き場所も必要になります。掃除や管理の手間も増えます。
何かを追加するだけでなく、減らすことや、配置を変えることも考える。
そういう意味では、作らないことも、ものづくりの選択肢のひとつなのかもしれません。
そもそも、何のために作るんだっけ。
考えてみれば、ものづくりは目的ではなく、手段です。
もちろん、趣味なら作ること自体が目的でもいい。
むしろ、それが楽しいわけですから。
でも、誰かの困りごとを解決するためなら、話は少し違います。
必要なのは、困っていることが解決すること。
それが市販品で済むなら、それでいい。
ちょっとした改造で済むなら、それでもいい。
何も作らずに解決できるなら、なおさらいい。
もちろん、既製品ではどうにもならないこともあります。
そんなときは、あれこれ考えて、自分で作ればいい。
作る、買う、組み合わせる、あるいは何もしない。
選択肢は、いろいろあった方が面白いと思います。
さて、そんなことを考えながら、今日も机の上には試作品が並んでいます。
使えるかどうか分からない部品や、途中まで作った道具もあります。
本当に必要なのかと聞かれれば、少し怪しいものも。
でも、まあ、これはこれでいいんです。
仕事では作らない選択も大事。でも、趣味なら話は別ですから。
……ということにしておきましょう。

