街を歩いていると、いろいろな看板が目に入ります。
「本日の日替わりランチ」
「新規のお客様大歓迎!」
「地域最安値に挑戦!」
「スタッフ募集中!」
お店の入口には、営業時間、定休日、おすすめ商品、キャンペーンのお知らせなど、実にたくさんの情報が並んでいます。どれも、お店にとっては伝えたいことなのでしょう。
でも、時々思うんです。
「これ、いったい誰が読んでいるんだろう?」
今日は、お店の看板やPOPについての話です。
伝えたいことは、どんどん増える。
お店の方と仕事をしていると、伝えたいことが次々と出てくる場面があります。
せっかくだから、おすすめ商品も紹介したい。
価格も分かった方が親切だし、お得なキャンペーンも知ってほしい。
営業時間や定休日はもちろん、SNSや予約サイトへのQRコードも載せておきたい。
一つひとつは、もっともな話です。
ところが、それらを全部ひとつの看板に詰め込むと、どうなるでしょう?
文字が小さくなり、情報が増え、結局何が一番伝えたいのか分からなくなる。
だったら看板をもう一枚増やそう。
そうして入口の掲示物が、少しずつ増えていくわけです。
もちろん、情報が多いこと自体が悪いわけではありません。
問題は、伝えたい情報の量と、相手が受け取れる情報の量が、必ずしも一致しないことなんだと思います。
通りすがりの人は、そんなに暇じゃない。
例えば、歩道を歩いている人。
お店の前を通り過ぎるのに、何秒かかるでしょうか。
看板に気づいて、足を止めて、内容を読んで、興味を持つ。
そこまでしてもらうには、それなりの理由が必要です。
そもそも、その人は看板を読むために歩いているわけではありません。
駅に向かっているのかもしれないし、買い物の途中かもしれない。
考え事をしていたり、急いでいたりすることもあるでしょう。
そんな人に、小さな文字でびっしり書かれた説明を読んでもらうのは、なかなか難しい。
一方、すでにそのお店に興味を持っている人なら、少し長い文章でも読んでくれるかもしれません。
つまり、同じ看板でも、見る人の状況によって役割が違うわけです。
通りすがりの人に必要な情報と、入店しようか迷っている人に必要な情報。
実は、分けて考えた方がいいのかもしれません。
看板を読んで、お店に入るとは限らない。
もうひとつ、気になることがあります。
お店の入りやすさは、看板だけで決まるのでしょうか?
私は街を歩いていて、初めてのお店に入ろうとするとき、まず店内の様子が気になります。
どんな雰囲気なのか。
お客さんはいるのか。
どこから入ればいいのか。
中が見えないお店だと、少し勇気が必要です。
逆に、店内の様子がよく分かって、楽しそうに過ごしている人が見えれば、
それだけで入りやすく感じることもあります。
もちろん、業種やお店の雰囲気によって違うでしょう。
ただ、看板にたくさん説明を書くより、入口の見通しをよくした方が効果的な場合もありそうです。
例えば、入口に並んだのぼりや掲示物を少し整理する。
窓に貼ったポスターを移動して、店内が見えるようにする。
それだけで、お店の印象が変わるかもしれません。
情報を足すことだけが、伝える方法ではない。
これは結構、大切なことだと思っています。
そもそも、看板の仕事って何だろう?
看板を作ろうとすると、つい「何を書くか」から考え始めます。
でも、その前に考えたいことがあります。
そもそも、この看板には何をしてほしいのでしょうか。
お店の存在に気づいてもらうこと?
何のお店なのかを伝えること?
入っても大丈夫だと安心してもらうこと?
それとも、今だけのお得な商品を紹介すること?
目的が違えば、必要な情報も、設置する場所も変わってきます。
場合によっては、看板ではなく、店内の照明や商品の見せ方を変えた方がいいこともあるでしょう。
看板を作る前に、看板以外の方法も考えてみる。
そんな順番があってもいいと思います。
読まれない看板にも、意味はある?
ここまで書いてきましたが、実は看板の情報が全部読まれる必要もないと思っています。
例えば、昔ながらの商店街に並ぶ手書きのPOP。
細かい内容までは読まなくても、「なんだか賑やかなお店だな」という印象を受けることがあります。
八百屋さんの威勢のいい値札や、居酒屋さんの壁に貼られた短冊メニューもそうです。
情報として読むだけでなく、お店の雰囲気を作っているわけです。
そう考えると、掲示物を減らせば減らすほどいい、という話でもありません。
静かで落ち着いたお店には少ない情報が似合うかもしれないし、
活気のあるお店には賑やかな掲示が似合うかもしれない。
結局は、そのお店がどんな場所で、誰に来てほしいのか。
そこから考える必要がありそうです。
ちょっと引いて、眺めてみる。
看板やPOPを作っていると、どうしても目の前の一枚に集中してしまいます。
文字の大きさ、色、写真、キャッチコピー。
もちろん、どれも大事です。
でも、完成したら少し離れて、お客さんが歩いてくる方向から眺めてみる。
そこに何が見えるのか?
何のお店なのか分かるのか?
入りたいと思える雰囲気があるのか?
その看板は、本当に必要なのか?
そんなことを考えてみるのも面白いと思います。
もっとも、看板を減らそうと提案する私自身、文章を書き始めるとついつい長くなってしまいます。
伝えたいことが増えて、なかなか削れない。
……お店の人の気持ちも、よく分かります。

