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丁寧すぎる接客は、親切なのか?

2026 10/16
2026年10月16日

お店に入ると、すぐに店員さんが声をかけてくれる。
「いらっしゃいませ! 何かお探しですか?」
「よろしければ、こちらの商品もご案内できます」
「何かございましたら、いつでもお申し付けください」

とても丁寧です。
もちろん、悪い気はしません。
でも、時々思うんです。
「いや、ちょっと放っておいてほしいんだけど……」

せっかく親切にしてくれているのに、そんなことを思う自分もどうかと思いますが。
今日は、接客の丁寧さについての話です。

親切にされると、断りづらい。

例えば、洋服屋さん。
ちょっと気になる服があって、ふらっと入ってみたとします。
まだ買うかどうかも決めていないし、何が欲しいのかもはっきりしていません。

とりあえず、いろいろ眺めてみたい。
ところが、服を一枚手に取ったところで店員さんがやってきます。

「そちら、新しく入荷した商品なんですよ」…なるほど。
「色違いもございます」…そうなんですね。
「よろしければ、ご試着もできますので」…ありがとうございます。

店員さんは何も悪くありません。むしろ、きちんと仕事をしているのでしょう。
ただ、こちらとしては、まだ誰かと話すつもりがなかった。
こうなると、服を見ることより、店員さんへの受け答えに意識が向いてしまいます。

そして、なんとなく落ち着かなくなって、店を出てしまう。
そんな経験、ありませんか?

声をかけないことも、接客かもしれない。

以前、Appleの直営店で働いていたことがあります。
そこでは、お客さんによって接し方を変えることの大切さを感じました。

何を買えばいいのか分からず、相談したい人。
購入するものが決まっていて、すぐに手続きを済ませたい人。
とりあえず新しい製品に触ってみたい人。

同じ店に来ていても、目的はそれぞれ違います。
当然、求めている接客も違います。
こちらから積極的に声をかけた方がいい場合もあれば、少し距離を置いた方がいい場合もある。

もちろん、お客さんの気持ちを完全に読み取れるわけではありません。
だからこそ、表情や行動を見たり、声のかけ方を工夫したりする必要があるんだと思います。

何かをしてあげることだけが、親切ではない。
何もしないで見守ることも、接客のひとつなのかもしれません。

丁寧な言葉と、感じのよさは別の話。

もうひとつ気になるのが、言葉遣いです。
「少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか」
「こちらでお間違いございませんでしょうか」
「ご確認いただけますと幸いでございます」
どれも丁寧に伝えようとしているのは分かります。
ただ、丁寧な言葉を重ねれば重ねるほど、感じがよくなるかというと、そうでもない気がします。

例えば、小さなカフェでコーヒーを注文したとき。
「少々お待ちくださいね」
と自然に言われる方が、かえって心地よいこともあります。

もちろん、高級ホテルと近所の喫茶店では、求められる接客も違うでしょう。
どちらが正しいという話ではありません。

大切なのは、言葉の丁寧さよりも、その場所や相手に合った距離感なのではないでしょうか。

親切のつもりが、おせっかいになる。

こうした話は、接客だけではありません。
Webサイトを開くと、すぐにチャットの案内が表示される。
商品を見ていると、会員登録をすすめる画面が出てくる。
操作をするたびに、親切な説明が表示される。
どれも、利用者の役に立とうとしているのでしょう。

でも、必要としていない人にとっては、少し邪魔になることもあります。
そもそも親切というのは、提供する側が決めるものなのでしょうか。
「これだけ丁寧に説明したんだから、親切なはず」
そう思っていても、相手が求めていなければ、ただの余計なお世話になってしまう。

難しいところです。

だからといって、何もしなければいいわけでもありません。
困っている人を放っておくのも、それはそれで問題です。
結局、親切かどうかは、行動そのものよりも、相手の状況によって変わるのでしょう。

ちょうどいい距離感って、何だろう?

個人的には、必要なときに頼れる安心感があるといいなと思います。

例えば、お店に入ったときに軽く挨拶してくれる。
その後は自由に見て回れる。
何か聞きたいことがあれば、すぐに相談できる。
そんな接客です。

もちろん、すべてのお店がそうすればいいわけではありません。
積極的に話しかけてもらうのが楽しいお店もありますし、
店員さんとの会話そのものが魅力になっている場所もあります。

だからこそ、「丁寧な接客とはこういうもの」と決めつけない方がいい。

接客マニュアルを作るなら、言葉遣いや動作だけでなく、
どんなときに声をかけ、どんなときに見守るかまで考えてみる。
そんな方法もあると思います。

丁寧すぎる接客は、親切なのか。

結局のところ、丁寧であることと、親切であることは、必ずしも同じではないのでしょう。
丁寧さは、提供する側の振る舞い。
親切かどうかは、受け取る側の状況や気持ちにも左右される。
そんな違いがあるように思います。

もっとも、店員さんに放っておいてほしいと思っていたくせに、
いざ質問したいときに誰も見当たらないと、今度は「店員さん、どこ行った?」と思ってしまう。
我ながら、ずいぶん勝手なものです。

でも、そんな勝手なお客さんの気持ちも含めて考えるのが、接客という仕事なのかもしれません。

そもそも庵

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山崎浩司
しかけづくり 代表
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