「あなたの長所を教えてください」
就職活動のエントリーシートや面接で、よく聞かれる質問です。
自分のことなんだから、自分が一番よく知っているはず。
ところが、いざ答えようとすると、これがなかなか難しい。
「真面目なところです」
「コミュニケーション能力があります」
「最後まで諦めずに取り組めます」
うーん。何だか、どこかで聞いたような言葉ばかり。
そもそも、自分の長所を自分で説明するって、結構な無理難題ではないでしょうか?
自分にとっての普通は、長所に見えない。
例えば、誰かに何かを説明するとき、相手が理解できているかを確認しながら話す人がいるとします。
本人にしてみれば、ごく普通のこと。
特に意識しているわけでもないし、特別な能力だとも思っていません。
でも、周囲の人からすれば「説明が分かりやすい人」かもしれません。
反対に、自分では「行動力がある」と思っていても、
周囲からは「ちょっとせっかちな人」と見られている可能性もあります。
どちらが正しいという話ではありません。
見る角度によって、同じ特徴が違って見えるということです。
考えてみると、自分の顔だって、鏡や写真を使わなければ直接見ることはできません。
なのに、自分の性格や能力については、自分で正確に説明することを求められる。
なかなか不思議な話です。
長所は、名前をつけると急につまらなくなる。
就職活動の自己PRでは、長所を短い言葉にまとめることがあります。
「協調性」「主体性」「責任感」「柔軟性」。
もちろん、どれも大切なことです。
でも、その言葉だけでは、どんな人なのかよく分かりません。
例えば、同じ「協調性がある人」でも、
意見の違う人たちの間に入って話をまとめる人もいれば、
困っている人にさりげなく手を貸す人もいます。
周囲の意見をよく聞く人もいるでしょう。
それぞれ、かなり違う能力です。
にもかかわらず、ひとつの単語にまとめると、みんな同じように見えてしまう。
長所を分かりやすく伝えようとして、その人らしさを削ってしまっている。
そんなことも起きているのかもしれません。
自分のことを、人に聞いてみる。
だったら、長所を自分だけで考えるのをやめてみたらどうでしょう?
例えば、友人や同僚に聞いてみる。
「私って、どんなことが得意そう?」
「一緒に仕事をしていて、助かったことってある?」
「私らしいなと思った出来事は?」
「長所を教えてください」と聞くより、
具体的な経験を尋ねた方が答えやすいかもしれません。
そして、返ってきた答えを集めてみる。
自分では当たり前だと思っていたことが、意外と評価されていたりする。
逆に、自分が頑張ってアピールしていた部分には、あまり反応がなかったり。
ちょっと怖い気もしますが、面白そうです。
もちろん、他人の評価がすべてではありません。
相手との関係によって見えている部分も違いますし、親しい人だからこそ気づかないこともあるでしょう。
でも、自分だけで考えるより、見えるものは増えそうです。
自己PRを、自分で書かなくてもいいのでは?
ここで、もうひとつ考えてみます。
そもそも、自己PRは本人が一人で書かなければならないのでしょうか?
例えば、誰かにインタビューしてもらう。
これまでの経験や、好きなこと、苦手なこと、普段どんなふうに物事を考えているのか。
いろいろ質問してもらいながら、話をする。
すると、自分では思いつかなかったエピソードが出てくるかもしれません。
聞き手が「それ、結構すごいことじゃないですか?」と言っても、
本人は「え、普通じゃないですか?」なんて答える。
実は、そういうところに、その人らしさが隠れている気がします。
企業のプロフィールや商品紹介を考えるときにも、似たようなことがあります。
本人にとっては当たり前の仕事が、外から見ると大きな魅力だったりする。
だったら、就職活動でも事業の紹介でも、自分の魅力を見つけるところから、誰かと一緒にやってみる。
そんな方法があってもよさそうです。
ただし、選考の場で求められる本人の考えや経験まで、誰かに作ってもらうのは違います。大切なのは、うまい文章を代わりに書いてもらうことではなく、自分でも気づかなかったことを発見することなのでしょう。
短所も、見方を変えれば長所になる?
よく「短所は長所の裏返し」と言います。
心配性は慎重。
頑固は意志が強い。
優柔不断は柔軟。
まあ、何でも言い換えればいいという話でもないでしょう。
実際に困っている短所を、無理やり長所に変換しても仕方ありません。
ただ、同じ特徴でも、置かれた環境によって役に立つこともあれば、そうでないこともあります。
細かいことが気になる人は、大雑把に進めたい場面では面倒がられるかもしれません。
でも、品質確認の仕事では、その細かさが頼りになることもあるでしょう。
つまり、長所というのは、その人の中に単独で存在するものではなく、
どんな場面で、どう役に立つかによって見えてくるものなのかもしれません。
そもそも、自分を一言で説明できるのか。
考えてみれば、人間はそんなに単純ではありません。
仕事では几帳面なのに、家では片づけが苦手だったり。
初対面ではおとなしいのに、好きな話になると急にしゃべり始めたり。
そんな人もいるでしょう。
自分の特徴を、たったひとつの言葉にまとめる必要はないのかもしれません。
就職活動でも、仕事のプロフィールでも、大切なのは立派な長所を並べることより、
その人がどんな場面で何を考え、どう行動してきたのかを伝えること。
そこから読み取れる魅力もあるはずです。
さて、ここまで自分の長所について考えてきましたが、
私自身の長所は何なのでしょう?
「いろいろな角度から物事を考えるところ」でしょうか?
それとも「ひとつのことにこだわらないところ」?
……いや、単に話があちこちに飛ぶだけかもしれません。
やっぱり、自分で考えるのは難しいものです。

