雨が降ると、傘を差します。
当たり前です。
でも、よく考えてみると、傘ってずいぶん昔から、ほとんど同じ形をしています。
棒があって、骨があって、布が張ってある。真ん中の棒を持って、頭の上に広げる。
自動車は電気で走るようになり、電話は手のひらに収まるコンピューターになりました。
なのに傘は、相変わらず棒と布です。
しかも、風が吹けばひっくり返るし、横殴りの雨では足元が濡れる。
使い終わったら、今度は濡れた傘の置き場所に困ります。
そもそも、雨を防ぐ道具として、あの形が本当に最適なんでしょうか?
傘って、結構不便じゃない?
まず、傘の不便なところを考えてみます。
片手がふさがる。
風に弱い。
足元が濡れる。
人混みでは邪魔になる。
電車に乗るときは、周囲の人に水滴がつかないように気を使う。
お店に入れば傘立てを探し、出るときには自分の傘がどれだったか分からなくなる。
改めて並べてみると、なかなか問題の多い道具です。
特に気になるのが、傘を差しているのに濡れること。
頭や肩は守られていても、靴やズボンは普通に濡れます。
だったら、もっと全身を覆えばいいじゃないか。
そう考えたくなります。
でも、傘を大きくすれば、今度は人とすれ違いにくくなる。
風の影響も受けやすくなるでしょう。
どうやら、単純に大きくすればいいという話でもなさそうです。
そもそも、屋根を持ち歩くという発想。
傘を別の言い方にすると、「持ち運べる屋根」です。
こう考えると、なかなか大胆な発明です。
建物の屋根は、柱や壁で支えています。
それを、一本の棒で支えて持ち歩く。
しかも、使わないときは閉じて細くできる。
折りたたみ傘なら、カバンの中に入ってしまいます。
よく考えると、これは結構すごいことです。
電池もモーターも必要ありません。
ボタンを押したり、手で動かしたりするだけで、瞬時に屋根が現れる。
雨がやんだら、また細い棒に戻る。
あれ? 傘って、実は相当よくできた道具なんじゃないか?
文句を言うつもりで考え始めたのに、少し感心してしまいました。
ほかの方法はないんだろうか。
もちろん、傘以外にも雨を防ぐ方法はあります。
例えば、レインコート。
両手が自由になるし、風が強い日にも使いやすい。
自転車に乗るときや、屋外で作業するときには、傘より便利な場面もあります。
でも、建物に入るたびに脱いだり、濡れたものをしまったりするのが面倒です。
蒸れることもあります。
だったら、帽子と肩を覆う小さな屋根を組み合わせたらどうだろう。
あるいは、リュックに取り付けて、手を使わずに傘を差せる仕組みは?
実際、世の中にはそうした発想の雨具もあります。
ただ、便利そうに見えても、持ち運びや見た目、風への強さなど、別の問題が出てきます。
何より、日常的に使うものは、準備が面倒だと続きません。
雨が降り始めたら、さっと取り出して使える。
傘の強さは、案外そこにあるのかもしれません。
傘そのものを変えなくてもいい?
もう少し違う角度から考えてみます。
そもそも、雨に濡れないためには、必ず自分で屋根を持ち歩く必要があるのでしょうか?
例えば、駅から建物までの通路に屋根があれば、その区間では傘がいりません。
商店街のアーケードもそうです。
雨の日にお店へ入るとき、濡れた傘を置く場所が分かりやすければ、それだけでも快適になります。
電車やバスの中で濡れた傘が邪魔になるなら、収納方法を工夫するという考え方もあります。
つまり、傘の形を変えることだけが解決策ではないわけです。
道具を改良するのか。使う環境を変えるのか。使い方を工夫するのか。
考えてみると、いろいろな方向があります。
もっとも、日本中の歩道に屋根をつけるわけにもいきません。
結局、一人ひとりが傘を持つ方が、ずっと現実的な場面も多いでしょう。
変わらないのには、理由がある。
傘は昔から変わらないように見えますが、実際には少しずつ改良されています。
軽い素材、丈夫な骨、撥水性の高い生地、ワンタッチで開く仕組み。
折りたたみ傘も、ずいぶん使いやすくなりました。
基本的な形は同じでも、その中身は進化しているわけです。
そして、あの形が長く使われているのは、それなりに理由があるのでしょう。
安く作れて、持ち運べて、すぐに使える。
多少濡れるとはいえ、普段の雨なら十分に役立つ。
何より、誰でも使い方を知っています。
新しい道具を考えるとき、つい今までとは違う形を目指したくなります。
でも、長く使われているものには、簡単には置き換えられないよさがあるのかもしれません。
ところで、傘はまだ進化するのか?
そんなわけで、傘の不便さについて考えていたら、いつの間にか傘の優秀さに気づいてしまいました。
もちろん、改善の余地がないわけではありません。
濡れた傘の扱い方や、風への強さ、持ち運びやすさなど、まだ工夫できそうなところはあります。
ただ、まったく新しい形にすることが、必ずしも進化とは限らない。
今の形を残しながら、少しだけ使いやすくする。
あるいは、傘ではなく周囲の環境を変えてみる。
そんな方法もありそうです。
さて、ここまで傘について考えてきましたが、実は私が一番困っていることは、別にあります。
それは、雨がやんだ途端に、傘の存在を忘れてしまうこと。
電車の中、飲食店、訪問先。
いったい今まで何本の傘を置き忘れてきたことか。
傘の形を変えるより、まずは忘れない仕組みを考えた方がいいのかもしれません。
……いや、そもそも忘れなければいいだけなんですけどね。

